short story ページ38
ガチャ、と扉の開く音がする。
コンロの火を消して玄関へと駆け寄ると、少し乱れた髪をガシガシと直す彼の姿。
『おかえりなさい』
「戻りました」
恋人になった今も尚、彼の敬語は抜けない。私のことも相変わらずさん付けだし、やめてよって言ったのに癖だからと一蹴された。
『今日も大変だった？』
「死後からの時間経過が中々だったので、清掃が」
最初は話を聞く度におぉ…となっていたけど、もう慣れてしまった。
先にシャワーへ行ってきます、とバスタオルと着替えを片手に浴室へ向かった彼。本当はハグしたり、キスしたりしたいけど…。
�犁△辰討�た姿のまま、綺麗な貴方を抱きしめたくないんです��
そう言って断られてしまった。
…あと、本当は私のことも呼び捨てで呼んで欲しい。
私も一応、年頃の女の子だし。恋人は吐夢が初めてだ。
今までの彼女のことも、そうやって呼んでいたと言ったけど…ちょっとモヤモヤする気持ちがどこかにあって。
キッチンに戻って、ぼーっとしながらお鍋をかき混ぜていると背後にはいつの間にか上がってきた彼が立っていた。
「どうしました？」
『わっ、』
後ろからキッチンの縁に手をついて、耳元で囁かれる。まるで抱きしめられてるみたいな体制にびっくりして振り向くと
その綺麗が顔は目と鼻の先にあって。
『っ』
思わずその大きな瞳に吸い込まれそうで、目を逸らそうとした…のに。
「…… Aさん」
いつもより低くて、甘い声。キスしたい時、いつも彼は私の唇をなぞる。
優しく当てられた親指がふにふにと私の唇を弄んで。
『…しな、いの？』
思わず聞くと、満足そうに口角を上げた。目を閉じて、その顔が近づく。受け入れようとしたけど、咄嗟に肩を押した。
「…Aさん？」
『あっ、あの』
不満そうに少し歪んだ眉。
『な、名前！』
「はい？」
『今日は呼び捨てしてくれないと、ダメです。』
グッとキスしたい気持ちを抑えて、そう告げた。
「以前より少し、わがままになりましたね」
『……ダメ？』
「…いいえ？」
そんな貴方も、可愛らしくて愛おしいです。
そう言ってもう一度、私の唇を撫でた。
「……A」
『っ！』
たったそれだけの事。なのに胸がドクンと高鳴る。
「触っても、いいですか？」
答える前にキスするのは彼の方。
結局今日もまんまと、彼の掌の上で転がされて。
「…ねえ。Aが、もっと欲しいです」
息ができないほど、溺れていくだけ。
ss : 名前で呼んで
終わり
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蒼(プロフ) - のんさん» 初めまして！よかったです…！😭吐夢くんの重さならきっとヒロインちゃんを1人逝かせることは無いよな…と思いニヤニヤしながら書いてました☺️笑とても素敵なコメントありがとうございます😭 (3月24日 11時) (
レス) id: 17192916b3 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - 更新ありがとうございます！元々の終わり方も好きでしたが、Another endの方も好きでした...！吐夢くんとなら地獄でもどこへでも行きたいですね← 最高でした...(語彙力なくてうまく伝えられずすみません😂) (3月24日 7時) (レス) @page37 id: 54603a8b2a (このIDを非表示/違反報告)
蒼(プロフ) - 零さん» ありがとうございます🍀✨好きなエンドが別れるかなと当方も書きながら思っていたので、Anotherの方で楽しんでいただけて良かったです…！素敵なお言葉ありがとうございました☺️🌷 (3月23日 16時) (レス) id: 17192916b3 (このIDを非表示/違反報告)
零(プロフ) - こんにちは。作品を一気に見て感想の方をコメントさせて頂きました。私、個人的にはAnother endが好きな終わり方だったな、と勝手ながら思いました。勿論、本編の方もドキドキしながら読ませて頂きました。素敵な作品を有難うございます。長文失礼しました。 (3月23日 16時) (レス) id: 46e0494878 (このIDを非表示/違反報告)
ニー(プロフ) - 蒼さん» あ、そうなんですね！分かりました！また機会があるときにお願いします！ (3月20日 11時) (レス) id: e747ca13ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蒼 | 作成日時：2024年3月4日 13時
